凛として

芝居を観るとき私はできる限り早めに着席し、これから始まる舞台に思いを馳せる。

劇場は神楽坂のシアター・イワト 。


Rlung・風(ルン)第五回公演「乃木坂倶楽部」を観てきました
Rlung・風(ルン)は、声優古澤徹さんが、企画、作、演出のユニットです。


開演前、声優の堀内賢雄さんの朗読が流れて(美声です。セクシーでゾゾっとしちゃいました)。
瞳を閉じて聞きました。自分がどこにいるか忘れた一瞬がありました。


舞台は昭和4年。離婚の後単身上京した萩原朔太郎と、彼のもとを訪れる友人達(三好達治室生犀星辻潤、生田春月、宇野千代、そして芥川龍之介)の物語です。朔太郎は暗い時代の中、社会の無用物たる己に忸怩たる思いを抱きつつ、死ぬ根性もない小心者と嘆く。そんな朔太郎の厭世ぶりを宮崎稲穂さんが好演。じめじめした性格なのに何故か暗くなく、可愛い愛すべき朔太郎でした。


ストーリーよりは状況の中の心理状態を見せていく芝居でした。退屈と思った人もいたかもしれませんが、私はとても好きです。それぞれの苦悩とか詩に対する思いとか、背負ってるものへの様々な心の動きを、ひとりひとりの役者がリアリティーを持ちつつ美しく伝えてくれました。


今回、朔太郎の元妻上田稲子役で出演されてる瀬尾恵子さんは、私が昔いたプロダクションの声優部の先生です。 
瀬尾先生が「声優部で芝居をやろう」と言ってくださって、私に別役実の「不思議の国のアリス帽子屋さんのお茶の会」のチシャ猫をやらせてくださいました。
瀬尾先生と出会い、再び演劇と出会い私は、今こうして芝居を勉強しています。


瀬尾先生の上田稲子は凛としていました。子どもを捨てて男と出て行った妻。言語道断と言われますが、薄幸でも精一杯幸せを求めて凛として生きた姿はとても印象的でした。


オセローで客演された藤田三三三さんの所属されてる「遊戯空間」の篠本賢一さんも三好達治役で出演されてます。素敵な時間を頂きありがとうございました。